パキスタンは、アジアの暗号資産をめぐる動きが最も速い国です。2018年に中央銀行が銀行による暗号資産企業へのサービスを止め、2025年には政府が暗号資産評議会を設けてビットコイン準備金を発表、そして2026年3月に仮想資産法が施行されました。Chainalysisの2025年「世界暗号資産普及指数」でパキスタンは3位、連邦税オンブズマンは利用者を約900万人と推計しています。
ただ、法律と日々の実務はまだ噛み合っていません。2026年10月時点で、PVARAの正式ライセンスを持つプラットフォームはなく、銀行から個人の暗号資産購入に直接入金することもできません。以下では、パキスタンの暗号資産の買われ方、各プラットフォームの立ち位置、注意すべきリスクを整理します。ステーブルコイン全般のコツはUSDTの買い方ガイドをご覧ください。
01パキスタン暗号資産パスポート
- 法的地位
- 合法・規制あり(仮想資産法2026)、法定通貨ではない
- 規制当局
- PVARA(長官:Bilal Bin Saqib)
- 正式ライセンス
- まだなし。BinanceとHTXがNOC(2025年12月12日)
- 通貨
- パキスタン・ルピー(PKR)
- 銀行
- 2026年4月14日にSBPが禁止を解除(認可・申請中のVASPのみ)
- 主な購入方法
- Binance P2P:Easypaisa、SadaPay、NayaPay、Raast
- 税金
- 2026-27年度からキャピタルゲイン課税、詳細は諸説あり
- CEX.IO
- パキスタンの利用者を受け付け · PVARA未認可
02パキスタンで暗号資産は合法?PVARAと仮想資産法2026
合法で、いまは専門の規制当局もあります。経緯を振り返ると、2025年3月14日にムハンマド・オーランゼーブ財務相のもとでパキスタン暗号資産評議会が発足。2025年7月8日の仮想資産令でパキスタン仮想資産規制庁(PVARA)が設立されました。仮想資産法2026は2026年3月4〜5日に署名・官報掲載され、3月5日から施行されています。
同法のもとでは、仮想資産サービス事業者はPVARAのライセンスが必要です。区分は交換業やカストディからデリバティブ、資産運用まで10種類、ルートは規制サンドボックス、異議なし証明書(NOC)、正式ライセンスの3つ。ライセンス規則は2026年8月22日に告示され、申請ポータルも開きました。第70条の経過措置により、すでに営業している事業者は2026年9月5日までに申請しなければ、パキスタン人へのサービスを停止する必要があります。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年3月14日 | パキスタン暗号資産評議会が発足 |
| 2025年7月8日 | 仮想資産令でPVARAを設立 |
| 2025年12月12日 | PVARAがBinanceとHTXにNOCを発行 |
| 2026年3月5日 | 仮想資産法2026が施行 |
| 2026年4月14日 | SBPのBPRD通達2026年第10号で2018年の銀行禁止が終了 |
| 2026年8月22日 | ライセンス規則を告示、申請ポータル開設 |
| 2026年9月5日 | 既存事業者の申請期限 |
出典:PVARA公式サイトと告示、仮想資産法2026、報道。
PVARAのBilal Bin Saqib長官によると、約70の海外取引所が申請または参入の意向を示しています。最初の正式ライセンスは2026年第4四半期の見込み(公式には未確認)で、トラベルルールの執行は2027年に続く予定です。見落とされがちなのは、2025年12月のNOCはあくまで準備段階の許可で、営業ライセンスではないという点です。
03中央銀行が禁止を解除:銀行にできること・できないこと
2026年4月14日、パキスタン国立銀行(SBP)はBPRD通達2026年第10号を出し、銀行の仮想通貨取扱いを禁じた2018年4月の通達を置き換えました。銀行、マイクロファイナンス銀行、決済事業者は、PVARA認可(および申請中)のVASPに口座を開設できるようになり、顧客資金を分別管理するルピー口座も含まれます。
ただし3つの制限が残ります。銀行は自己資金でも顧客資金でも暗号資産の売買や保有はできません。NOCのみのプラットフォームは用途限定の口座しか持てません。そして今回の変更は認可事業者向けで、P2Pで取引する個人は対象外です。実際には、銀行から取引所への直接振込が当たり前になるのは正式ライセンスが出てからでしょう。2026年4月26日のPVARA勧告(PVARA/ADV/001/2026)は、銀行やフィンテックがステーブルコイン送金などの試験事業を発表する前にPVARAの承認が必要だとも付け加えています。
04パキスタンの人はいまどうやってUSDTを買っているか

ライセンスが出るまで、ルピーを取引所に直接送る方法はほぼないため、個人はBinance P2Pを使います。2026年10月1日にUSDT/PKR市場を確認したところ、買い側の広告は578件、売り側は1,250件。上位20件の広告のうちEasypaisaが18回登場し、銀行振込が7〜11回、SadaPayとNayaPayが各9回、Raastが5回で、Meezan、UBL、Upaisaがそれに続きました。
JazzCashが上位20件に見当たらなかったのは目を引きます。最良価格は1USDT=約281〜283ルピーで、市場実勢の約277ルピーに対して約2%のプレミアム。インド(約7%)やバングラデシュ(約3.4%)を大きく下回ります。
TelegramやWhatsAppのOTCグループもあちこちにありますが、リスクははるかに高くなります。エスクローがなく、コインを解放しない売り手、偽の支払いスクリーンショット、詐欺由来の資金が横行しています。2018年の禁止下で銀行は暗号資産がらみの入金を疑わしいものとして扱ってきましたし、新ルールは認可事業者だけが対象なので、個人のP2P取引はいまも銀行の不正検知に引っかかる可能性があります。P2Pの安全ガイドを読み、国別の支払い方法で入金手段も比べてみてください。
05パキスタンの暗号資産取引所(2026年の移行期)
正式に認可されたプラットフォームがまだないため、ランキングではPVARAでの状況(NOC、申請の報道、不明)、ルピーへのアクセス、手数料、セキュリティの実績を重視しました。「ダウンロードできる」は「認可されている」ではありません。9月5日の期限までに申請しなかったプラットフォームは法的なグレーゾーンにあります。
- ルピー流動性No.1
BinancePVARA NOC · 2025年12月
パキスタンで圧倒的に使われている取引所で、PVARAのNOCを最初に受けた2社の一つ。ルピーはP2P経由で入り、支払い方法の選択肢はEasypaisa、銀行振込、SadaPay、NayaPay、Raast、Meezan、UBLと最も豊富です。2025年4月には共同創業者CZがパキスタン暗号資産評議会の戦略顧問に就任しました。NOCは正式ライセンスではありません。
- 現物0.10%
- P2Pテイカー手数料なし
- Google Play 4.6★
- 編集部推薦 · カード購入
CEX.IO2013年創業 · 国際取引所
老舗の取引所の一つで、Visa、Mastercard、Apple Pay、Google Payで暗号資産を購入できます。米国ではFinCEN登録の送金業者(MSB)として各州の送金業ライセンスを持ち、英国ではFCAにAML目的のみの登録をしています。PVARAのライセンスはなく、パキスタンには海外法人からサービスを提供しているため現地の保護はありません。ルピー入金はなく、現地カードが通るかもまちまちです。日本居住者は利用できません。
- カード手数料0.49〜4.99%+サービス料
- 現物0.15% / 0.25%
- PVARA未認可
-
HTX(旧Huobi)PVARA NOC · 2025年12月
もう一つのPVARA NOC保有社で、ルピーはやはりP2P頼み。2023年11月に約1億1,300万ドルのハッキング被害を受け、損失は補填したと説明しています。現物の基本手数料0.20%はBinanceの2倍です。
- 現物0.20% / 0.20%
- P2P入金
- PVARA NOC
7.7/10公式サイト ↗ -
OKX申請済みと報道
すっきりしたプロ向け画面とWeb3ウォレットの統合が特長で、パキスタンのGoogle Playにアプリがあります(4.5★)。申請または参入意向を示した約70社の一つと報じられていますが、確認はとれていません。
- 現物0.08% / 0.10%
- P2P
- 申請は未確認
-
Bybit状況不明
パキスタンのGoogle Playで入手でき(4.4★)、ルピーのP2P市場もあります。2026年9月5日までにPVARAへ申請したかは公表されていません。2025年2月に約14億ドルのハッキング被害を受け、72時間以内に穴埋めしました。
- 現物0.10% / 0.10%
- P2P
- PVARA状況は不明
-
KuCoin状況不明
取扱銘柄が多く、パキスタンのGoogle Playにアプリがあります(4.4★)。PVARAでの状況はこちらも非公表。KuCoinは2025年1月に米国で有罪を認め、米国市場から撤退しました。
- 現物0.10% / 0.10%
- P2P
- PVARA状況は不明
7.1/10公式サイト ↗
| 取引所 | PVARAでの状況 | ルピーの入手 | 公式サイト |
|---|---|---|---|
| Binance | NOC(2025年12月) | P2P:Easypaisa、銀行、Raastなど | binance.com |
| HTX | NOC(2025年12月) | P2P | htx.com |
| OKX | 申請済みと報道(未確認) | P2P | okx.com |
| Bybit / KuCoin | 非公表 | P2P | bybit.com |
| CEX.IO | 未認可、申請は非公表 | ルピー不可、カードのみ | 上のランキング参照 |
2026年10月時点で、PVARA認可の国内取引所は見つかりませんでした。
CEX.IOについてはっきり書いておきます。パキスタンの利用者を受け付けており、Visa、Mastercard、Apple Payで少額をカード購入したい人に向いています。新規口座は最初の3か月、1日1,000ドル・月3,000ドルが上限です。ただしPVARAのライセンスはなく、パキスタンには海外法人からサービスを提供しており、トラブルになってもパキスタンの投資家保護は及びません。パキスタン発行のカードが拒否されることがあるとの口コミもあるので、まず少額で試してください。ライセンスが出たら、ルピーで入出金する人はPVARA認可のプラットフォームを優先しましょう。なお、日本居住者はCEX.IOを利用できません。
Visa、Mastercard、Apple Payで少額を買いたい方へ。国際プラットフォームなら数分で口座を開設できます。PVARA未認可 · ルピー入金不可 · カードが拒否される場合あり · 日本居住者は対象外
カードで購入Binancebinance.com ↗
支払い方法や加盟店バッジでP2Pを絞り込めるのが優秀。アプリは情報量が多く、慣れるまで時間がかかります。
06パキスタンの暗号資産の税金:情報が食い違うので記録を残す
2026-27年度(2026年7月1日〜)より前は、暗号資産の利益は原則として一般の所得・キャピタルゲインのルールで課税対象とされていましたが、専用の制度はなく、執行もほとんどありませんでした。IMFと協議して作られた新予算は、2001年所得税令第37条(キャピタルゲイン)を暗号資産にも適用する方針を打ち出しました。
予算成立後の要約は一致していません。6か月超の保有でPKR 50万を超える利益に一律15%とするものがある一方、短期(1年以内)15%・長期5%、PKR 10万超の暗号資産→ルピー出金に取引所が1%を源泉徴収、損失の4年繰り越し、取引所によるCNIC/NTNの収集を挙げるものもあります。成立した条文は確認できなかったため、FBRの通知か税理士の判断に従ってください。マイニング、ステーキング、エアドロップは通常所得として課税されると報じられており、申告はFBR IRISで行います。
最終的な税率がどうなっても、いまやるべきことは同じです。P2Pの注文、支払いの受領記録、出金記録をすべて保存しておきましょう。日本を含む他国の制度はアジアの暗号資産税金ガイドで比較できます。
07戦略的ビットコイン準備金と大きな流れ
2025年5月28日、ラスベガスのBitcoin 2025でBilal Bin Saqib氏は、政府主導で「決して売らない」国家ビットコインウォレットを発表しました。政府は第1段階として余剰電力2,000MWをビットコインマイニングとAIデータセンターに割り当てる方針も示し、IMFが懸念を表明しています。準備金が実際に何を保有しているかについて、公開データは見つかりませんでした。
パキスタンは年間約380億ドルの海外送金を受け取っており、ハワラやフンディの代わりにステーブルコインが使われる場面が増えています。2022〜23年にルピーが1ドル=178ルピーから約320ルピーまで下落し、インフレ率が29%近くに達したことで、多くの人がUSDTに流れました。とはいえ、正規の送金ルートをUSDTに置き換えることをPVARAが認めたわけではありません。認可事業者がルールに沿ったステーブルコイン送金を提供するまでは、銀行と認可送金業者が安全なルートです。隣国のインドやUAEとも比べてみてください。
08パキスタンで暗号資産を安全に買う手順
- プラットフォームの状況を確認
PVARAのサイトでNOCやライセンスの状況を調べ、正式ライセンス第1弾のリストに注目します。
- CNICで本人確認
自分の身分証だけで登録し、口座の貸し借りは絶対にしないこと。
- 自分名義の支払い口座を使う
Easypaisa、銀行、SadaPay、NayaPay、Raastのいずれかで、取引所の登録名と同じ名義のものを。
- P2P注文はアプリ内で
完了率の高い認証済み加盟店を選び、アプリ上で支払い済みにして、やり取りもすべてアプリ内で行います。
- 少額から始め、着金を確認
最初は少額で試します。売るときは実際に入金を確認してからコインを解放し、スクリーンショットだけで判断しないこと。
- 出金して記録を保存
ネットワーク(USDTは通常TRC-20)を再確認し、注文と受領記録を税金用に保存します。
09ウォレットと詐欺対策
パキスタンでよく使われるセルフカストディ型ウォレットは、Trust Wallet、Binance Wallet、MetaMask、OKX Walletです。P2PのUSDTは通常TRON(TRC-20)で送られ、手数料は安いものの、ネットワークやアドレスを間違えると永久に失うこともあります。暗号資産ウォレットガイドで選択肢を比べてください。
よくある詐欺は、Telegramの「シグナル」グループやマルチ商法型の投資アプリ、固定リターンをうたうUSDT「預金」商品、PVARAや銀行のサポートを名乗るなりすましです。PVARAは、無許可で暗号資産の提携やステーブルコイン事業を発表すること自体が違反だと警告しています。「PVARA承認」をうたう話を見かけたら公式サイトで確認しましょう。詳しくは暗号資産のセキュリティへ。ほかの国はアジア各国ガイドから探せます。日本国内で買う場合は金融庁登録の国内取引所が前提です。
よくある質問
2026年、パキスタンで暗号資産は合法ですか?
合法です。2026年3月5日に「仮想資産法2026」が施行され、パキスタン仮想資産規制庁(PVARA)が監督しています。暗号資産の保有や売買は禁止されていませんが、法定通貨ではありません。サービス事業者にはPVARAのライセンスが必要で、2026年10月時点で正式ライセンスを得た事業者はなく、BinanceとHTXが異議なし証明書(NOC)を持つだけです。
パキスタンでBinanceは合法ですか?
Binanceは2025年12月12日にPVARAからNOCを取得しました。NOCは正式ライセンスに向けた準備段階の許可であり、営業ライセンスではありません。Binanceはパキスタンで最も使われているプラットフォームで、ルピーはP2P市場を通じ、Easypaisa、銀行振込、SadaPay、NayaPay、Raastで入ってきます。最初の正式ライセンスは早くても2026年第4四半期と見られています。
パキスタンでUSDTを買うにはどうすればいいですか?
多くの人はBinance P2Pを使います。完了率の高い認証済みの売り手を選び、自分名義のEasypaisa、銀行、SadaPay、NayaPay、Raastの口座から支払うと、売り手が入金を確認した時点でエスクローのUSDTが解放されます。2026年10月1日の最良価格は銀行間レートより約2%高い水準でした。TelegramやWhatsAppではなく、必ずアプリ内で取引してください。
パキスタンの暗号資産の税金はどうなっていますか?
2026-27年度予算で、暗号資産の利益は2001年所得税令第37条のキャピタルゲイン枠組みに組み込まれましたが、公表された要約の内容が食い違っています。6か月超の保有でPKR 50万を超える利益に一律15%とするものもあれば、短期15%・長期5%と高額出金時の1%源泉徴収を挙げるものもあります。FBRの案内か税理士に確認し、FBR IRISで申告してください。
パキスタンでCEX.IOは使えますか?
口座は開設できます。パキスタンはCEX.IOのサポート対象外リストに入っていません。ただしCEX.IOはPVARAのライセンスを持たず、パキスタンの顧客には海外法人CEX OVRS LLC(ネビス)がサービスを提供しており、現地の投資家保護はありません。ルピー入金はなく、パキスタン発行のカードが通るかどうかもまちまちです。なお日本居住者は利用できません。
参考資料
- PVARA — パキスタン仮想資産規制庁 · 2026年10月確認
- 仮想資産法2026(PDF) · 2026年10月確認
- PVARA勧告 PVARA/ADV/001/2026 · 2026年4月
- パキスタン国立銀行(SBP) · 2026年10月確認
- Chainalysis — 2025年 世界暗号資産普及指数 · 2025年9月
- CEX.IO — 現在サポートしていない国 · 2026年10月確認
パキスタンでカードで初めての一枚を買うなら
国際プラットフォームはVisa、Mastercard、Apple Payに対応していますが、PVARAのライセンスはなく、ルピー入金もできません。日本居住者は利用できません。正式ライセンスが出たら、ルピーの入出金はPVARA認可のプラットフォームを優先しましょう。
国際ライセンス取得プラットフォーム · 2013年から運営 · 対象国の居住者向け(日本居住者は対象外)