シンガポールで初めてビットコインを買う人がつまずくのは、「どこで買うか」よりも「なぜクレジットカードが通らないのか」「登録ボーナスはどこに?」「取引前のクイズは何?」といった疑問です。答えはすべて一つの機関につながります。シンガポール金融管理局(MAS)です。このガイドでは、シンガポールの暗号資産取引所を使うためのルール、入金方法、認可プラットフォーム、ウォレット、税金までをまとめました。
結論を先に言うと、シンガポール居住者なら MAS Financial Institutions Directory(金融機関名簿)に載っている業者を選び、PayNowかFASTでSGDを入金し、長期で持つ分は自分のウォレットに移す、これだけです。手数料つきのランキングを先に見たい方は、シンガポールのおすすめ暗号資産取引所へどうぞ。
01シンガポール暗号資産市場の概要
- 規制当局
- シンガポール金融管理局(MAS)
- 通貨
- シンガポールドル(SGD)
- 主な法律
- 2019年決済サービス法、2022年金融サービス・市場法 第9部(DTSP)
- ライセンス
- DPTサービスにはMajor/Standard Payment Institutionライセンスが必要。2026年9月時点でMPIは約38社
- SGDの入金
- PayNow、FAST銀行振込
- 国内発行クレジットカード
- 認可業者でのリテール購入には使えない
- 税金
- キャピタルゲイン税なし。DPTの売買は2020年からGST免除
- CEX.IO
- シンガポール居住者は利用不可。MAS未認可
シンガポールの姿勢をひと言でまとめると「業界は歓迎、一般投資家は守る」です。Coinbase、Crypto.com、OKX、Geminiはいずれも現地でライセンスを持ち、最大手銀行DBSは独自のデジタル取引所を運営しています。その一方でMASは、暗号資産取引は「リスクが非常に高く、一般の人には適さない」と公言し、リテール口座に何重ものルールを課しています。
ライセンス数の数字には注意が必要です。業界の集計では、DPTサービスのMajor Payment Institution(MPI)ライセンスは2026年9月時点で約38件ですが、その多くは機関投資家や適格投資家だけを相手にしています。一般の居住者が口座を開けるのは十数社ほど。つまり「MAS認可」は第一関門にすぎず、次にリテール顧客を受け付けているかを確認する必要があります。
02リテール投資家が必ず出会うMASのルール5つ

MASは2024年9月に「DPTサービス事業者による消費者保護措置に関するガイドライン(PS-G03)」を公表しました。多くの措置は2024年半ばにすでに施行済みです。一般の購入者にとって重要なのは次の5つです。
1. 国内発行のクレジットカードは使えない。多くの人が最初に見る「決済拒否」はこれです。認可業者は、リテール顧客がシンガポール発行のクレジットカードでDPTを買うことを認められていません。デビットカードや海外発行カードは対象外ですが、銀行振込だけに絞っている業者も多くあります。カード購入はそもそもコストが高い理由はクレジットカードでビットコインを買う方法で解説しています。
2. インセンティブは一切禁止。登録でもらえるコイン、紹介報酬、取引くじなど、他国ではおなじみの販促が、非金銭的な特典も含めてすべて禁止です。3. 口座開設前のリスク認識評価。価格変動や全額を失う可能性を理解しているかを問われ、不合格なら取引できません。4. リテール向けのレバレッジ・貸し出し禁止。信用取引やデリバティブは利用できません。5. 資産の分別管理と信託保管。リテール顧客のコインをステーキングや貸し出しに回すこともできません。
さらにさかのぼると、2022年1月のガイドラインPS-G02により、DPT事業者は一般向けの広告ができなくなりました。公共交通機関、公共の場所、SNS、インフルエンサーを使った宣伝はすべて不可です。暗号資産ATMも姿を消しました。Deodiなどの事業者が機械を撤去しており、シンガポールでATMを使って現金でビットコインを買うことは事実上できません。ATMが残っている国は現金・ATMでの購入ガイドをご覧ください。
032025年6月のDTSP規制:「拠点はシンガポール、顧客は海外」の終わり
長年、一部の取引所はシンガポールで法人を設立しながら海外顧客だけを相手にし、現地のリテール規制を避けてきました。このモデルは2025年6月30日で終わりました。2022年金融サービス・市場法の第9部により、シンガポールで設立または営業し、海外顧客だけにデジタルトークンサービスを提供する事業者にも、デジタルトークン・サービスプロバイダー(DTSP)ライセンスが必要になったのです。
MASは 2025年6月6日の説明で、こうしたライセンスは「原則として発行しない」とし、移行期間も設けませんでした。報道によれば、ライセンスには最低資本金25万シンガポールドルと年間手数料1万シンガポールドルが求められます。結果として、海外向け専業の事業者が相次いで撤退・閉鎖しました。
利用者にとっての教訓は単純です。「本社がシンガポール」は「シンガポールに守られている」という意味ではありません(以前からそうでした)。重要なのは、その業者がシンガポールの顧客をカバーするMPIライセンスを持っているか、そして自分が実際に契約する法人はどこか、です。
04シンガポールでのビットコインの買い方:5ステップ
認可されたリテール向けプラットフォームなら、最初のビットコイン購入は半日もあれば終わります。以下はほとんどの業者に共通する流れです。
- MASの名簿で業者を確認する
MAS Financial Institutions Directoryで運営会社名を検索します(たとえばCoinhakoの運営会社はHako Technology)。DPTサービスのライセンスを持っていることを確認し、公式サイトでリテール顧客を受け付けているかも確かめます。
- Singpassで登録・本人確認
多くの業者はSingpass MyInfoに対応しており、書類をアップロードするよりずっと早く本人情報を入力できます。シンガポール在住の外国人は、通常パスポートとシンガポールの住所証明が必要です。
- リスク認識評価に回答する
MASが義務づけています。難しくはありませんが、きちんと読みましょう。急落の可能性や、業者が破綻した場合に資産を取り戻す難しさなど、実際のリスクが書かれています。
- PayNowまたはFASTでSGDを入金
アプリに表示されるPayNowのUEN/QRコード、またはFASTの振込先を使います。入金は通常即時です。必ず本人名義の口座から送金してください。名義が違うと返金されることがあります。
- 購入し、保管先を決める
成行注文か指値注文で購入します。少額で頻繁に動かす分はプラットフォームに、何年も持つ分は自分で管理するウォレットに移しましょう。

なぜPayNowなのか。即時に着金し、Independent Reserve、Coinhako、OKX SGはいずれもPayNow入金が無料です。報道によるとCoinhakoへのGrabPay入金は2.8%かかり、国内発行クレジットカードはそもそも使えません。
出金はFASTで銀行へ戻します。Independent ReserveはFAST出金1回1.50シンガポールドル(20万シンガポールドルまで)、Coinhakoは約2シンガポールドルと報じられています。他国の入金方法はアジアの暗号資産の支払い方法で比較しています。
05シンガポールの認可暗号資産取引所の選び方
シンガポールのリテール向けプラットフォームは3つのグループに分かれます。地元発のブローカー(Coinhako、Independent Reserve)、グローバル取引所のシンガポール法人(Coinbase、Crypto.com、OKX SG、Gemini、Upbit SG、Bitstamp)、そして銀行・ステーブルコイン系(DBS Digital Exchange、StraitsX)です。下の表は主な違いだけをまとめたもので、詳しい評価・手数料・アプリのレビューはシンガポール取引所ランキングにあります。
| 業者 | MASライセンス | SGD入金 | 基本手数料 | 公式サイト |
|---|---|---|---|---|
| Independent Reserve | MPI | PayNow無料 | 0.5%(取引量で低下) | independentreserve.com |
| Coinhako | MPI(Hako Technology) | PayNow/FAST無料 | 報道では0.6% | coinhako.com |
| OKX SG | MPI | PayNow/FAST無料 | 公式ページで要確認 | okx.com/en-sg |
| Coinbase | MPI(Coinbase Singapore) | 銀行振込 | スプレッド+手数料(要確認) | coinbase.com |
| Crypto.com | MPI(Foris DAX Asia) | PayNow/FAST | アプリ内スプレッド | crypto.com |
2026年10月時点。公式ページで手数料を確認できたのはIndependent Reserveのみです。その他は各社の手数料ページで確認してください。
地元ブローカー
- シンプルなアプリ、PayNow入金がスムーズ
- Coinhakoはシンガポールの登録ユーザー40万人超
- 取扱銘柄は少なめ、価格は流動性提供者の提示
- 少額の定期購入向き
グローバル取引所のSG法人
- 銘柄が多く、板が厚い
- おなじみのブランド、多機能アプリ
- 一部機能はシンガポールで無効
- 慣れてきた人向け
シンガポールドル建てのステーブルコインが必要なら、XSGDを発行する StraitsX がMPIライセンスを持ち、PayNowで発行(ミント)できます。一方、シンガポール最大の銀行が運営するDBS Digital Exchange(DDEx)は機関投資家と適格投資家専用で、一般の預金者は利用できません。
06Tokenize破綻の教訓:「ライセンス申請中」はライセンスではない
2025年、シンガポールの暗号資産ユーザーは苦い教訓を得ました。地元で有名だったTokenize Xchangeは、ライセンス申請者として何年も営業していました。2025年7月4日にMASが申請を却下し、同年9月30日に営業を停止。運営会社AmazingTechは暫定的な司法管理に入り、10月に清算命令を受け、創業者は詐欺的取引の罪で起訴されました。司法管理人の報告では、顧客への負債約2億6,600万シンガポールドルに対し、資産は約260万シンガポールドルしかありませんでした。
それ以前の2022年にも、HodlnautとZipmexが出金を凍結し、シンガポール拠点のThree Arrows Capitalが破綻しています。共通点は、利用者が「シンガポールで営業している」を「シンガポールに守られている」と受け取っていたことです。
取引所が安全かどうかを見分ける全体的な考え方は取引所の安全性とライセンスで解説しています。
07購入後の保管先:シンガポールで使われるウォレット
認可プラットフォームに預けた資産はMASの分別管理・信託保管ルールのもとにあり、頻繁に使うお金ならそれで十分です。何年も持つつもりの場合や、なくなったら眠れなくなる金額の場合は、セルフカストディ(自己管理)ウォレットを検討しましょう。
シンガポールでよく使われるのは、MetaMaskやTrust Walletなどのソフトウェアウォレット、LedgerやTrezorのハードウェアウォレット、XSGD用のStraitsXウォレットです。中国語圏のユーザーに人気のimTokenとTokenPocketも、実はシンガポールに本社があります。比較はおすすめ暗号資産ウォレットとハードウェアウォレットで。
シンガポールのプラットフォームから個人ウォレットへ出金するときは、そのウォレットが自分のものであることの証明(署名メッセージや少額のテスト送金)を求められることがあります。マネーロンダリング対策のトラベルルールによるものです。詳しくは送金とトラベルルールへ。
08シンガポールの暗号資産税制
シンガポールにはキャピタルゲイン税がありません。長期投資としてビットコインを保有し、利益が出て売却しても、原則として税金はかかりません。ただしIRASは実態を見ます。頻繁な売買、短い保有期間、値動きで利益を得る意図があれば、利益は事業所得として課税され得ます。マイニング、ステーキング報酬、暗号資産で受け取る給与や売上も所得として課税対象です。
間接税では、DPTの売買は2020年1月1日からGSTが免除されています(IRASのページ参照)。またシンガポールはOECDの暗号資産等報告枠組み(CARF)の導入を約束しており、取引所による報告は2027年ごろ始まる見込みです。最初から取引記録をきちんと残しておきましょう。日本の雑所得・確定申告との違いなど、各国の比較はアジアの暗号資産税制にまとめています。
シンガポールに滞在中で、対象国の居住者ですか?国際プラットフォームならVisa・Mastercard・Apple Payで暗号資産を購入できます。シンガポール居住者・日本居住者は利用できません
今すぐ始めるシンガポール以外では、香港、マレーシア、タイと比べる読者が多くいます。ルールは国ごとに大きく違うので、渡航や移住の前に確認しておきましょう。
よくある質問
シンガポールでビットコインを買うのは合法ですか?
合法です。シンガポールではビットコインなどの暗号資産を「デジタル・ペイメント・トークン(DPT)」と呼び、個人が購入・保有・売買することは認められています(法定通貨ではありません)。DPTサービスを提供する事業者は、2019年決済サービス法に基づきシンガポール金融管理局(MAS)のライセンスが必要です。MASは暗号資産取引について、リスクが非常に高く一般の人には適さないと繰り返し警告しています。
シンガポールでクレジットカードで暗号資産を買えますか?
リテール(一般個人)顧客の場合、MAS認可のプラットフォームでシンガポール国内発行のクレジットカードは使えません。MASの消費者保護ガイドラインで禁止されているためです。標準的な方法は、PayNowまたはFASTによるシンガポールドル(SGD)の銀行振込で、主要プラットフォームでは通常即時・無料です。デビットカードや海外発行カードは禁止の対象外ですが、受け付けるかどうかは業者によって異なります。
シンガポールで暗号資産の利益に税金はかかりますか?
長期保有の投資家であれば、通常はかかりません。シンガポールにはキャピタルゲイン税がないためです。ただし、売買の頻度・保有期間・意図から事業としての取引とみなされると、内国歳入庁(IRAS)は利益を課税所得として扱うことがあります。マイニング、ステーキング報酬、暗号資産で受け取る給与や代金は課税所得です。DPTの売買は2020年1月1日からGST(消費税)が免除されています。
シンガポール居住者はBinanceやBybitを使えますか?
実質的に使えません。Binance.comは2021〜22年にシンガポールから撤退し、シンガポールのユーザーへのサービスを停止したうえ、MASのインベスター・アラート・リストに掲載されています。Bybitは2023年に本社をドバイへ移し、シンガポールのリテール顧客にサービスを提供するライセンスを持っていません。居住者はCoinbase、Crypto.com、OKX SG、Coinhako、Independent ReserveなどMAS認可の業者を使いましょう。
シンガポールの取引所に登録ボーナスがなく、リスク診断があるのはなぜですか?
MASが義務づけているからです。2024年のガイドラインPS-G03により、認可業者はリテール顧客に紹介報酬を含む金銭的・非金銭的なインセンティブを提供できません。口座開設前にはリスク認識の評価を行う必要があり、リテール向けのレバレッジや貸し出しは禁止、顧客資産は信託で分別保管しなければなりません。シンガポールの利用者向けに「登録ボーナス」をうたう業者は、それ自体が危険信号です。
参考資料
- MAS Financial Institutions Directory · 2026年10月確認
- MAS Guidelines PS-G03 — consumer protection measures by DPT service providers · 2024年9月発出
- MAS clarifies regulatory regime for digital token service providers · 2025年6月6日
- IRAS — GST on digital payment tokens · 2026年10月確認
- Independent Reserve Singapore — fees · 2026年10月1日確認
- CEX.IO — countries and territories not currently supported · 2026年10月1日確認
シンガポール居住者ではない方へ
対象国に住んでいて、シンガポールには旅行や短期滞在で訪れているだけなら、国際プラットフォームでカード購入ができます(日本居住者は対象外)。シンガポール居住者はMAS認可のプラットフォームを利用してください。
国際ライセンス取得プラットフォーム · 2013年から運営 · 対象国の居住者向け(日本居住者は対象外)