「ブータン ビットコイン」で検索した人の多くは、こんな話を聞いたことがあるはずです。人口約78万人の仏教の小国が、ヒマラヤの水力発電でビットコインを掘り、いつの間にか世界有数のビットコイン保有国になった、と。それは事実ですが、物語の半分にすぎません。残りの半分は、ブータンの居住者は自国通貨ニュルタム(BTN)で暗号資産を合法的に買えないこと、そして国のビットコインがこの1年半で大量に流出していることです。ルール、数字、旅行者にできることを順に整理します。

- 法的地位
- 全面禁止ではない。法定通貨ではない。居住者向けの合法なニュルタム入金ルートなし
- 規制当局
- ブータン王立通貨庁(RMA)、GMC内はGFSO
- 取引所・マイニング
- ゲレフ・マインドフルネス・シティ(GMC)登録事業者のみ
- 通貨
- ニュルタム(BTN)
- 税金
- 法人税22%、個人の利益の扱いは不明確
- 国家保有
- ピーク約13,000BTC、2026年5月のオンチェーン残高は約3,100BTC(議論あり)
- 旅行者の決済
- Binance Pay+DK Bank(2025年5月から)
01ブータンの暗号資産は合法?RMAのルール
2025年4月30日、ブータン王立通貨庁(RMA、中央銀行に相当)は暗号資産に関する規制方針を公表し、「段階的かつ重点的」なアプローチを打ち出しました。暗号資産のマイニングと取引所業務は、ゲレフ・マインドフルネス・シティ(GMC)に登録した事業者とその提携先にのみ認められます。RMAの監督下にある銀行は、一般の人がニュルタムを暗号資産に替えることを認めてはいけません。GMCの外では、個人向けの暗号資産取引は一切認可されていません。
つまり、暗号資産を保有すること自体は明確に違法とはされていないものの、居住者には合法的な自国通貨での入金ルートがなく、違反時の罰則も公開資料では明らかになっていません。ブータン銀行(BoBとアプリのmBoB)、ブータン・ナショナル銀行、DK Bankなどはいずれも暗号資産の購入を処理できません。ちなみにブータンで「BNB」といえば、通常はBinanceのコインではなくブータン・ナショナル銀行(Bhutan National Bank)のことです。
02ブータンのビットコイン:政府系ファンドのマイニングと保有
ブータンの政府系ファンドDruk Holding & Investments(DHI)は2019年ごろから、国内の豊富な水力発電を使ってビットコインを採掘・保有してきました。2024年10月には、関連ウォレットの保有量がピークの約13,000BTCに達しています。
その後、状況は変わりました。オンチェーン分析プラットフォームArkhamのデータでは、流出が続いて残高は2026年4月に3,954BTCまで減り、5月16日には約3,100BTC(約2.52億ドル)になりました。2025年7月以降に流出したビットコインは約10億ドル相当で、Arkhamはこのペースが続けば2026年10月ごろにゼロになると試算していました。一方でDHIのCEO、Ujjwal Deep Dahal氏は最近の売却を「覚えていない」と述べ、マイニングも続いているとしています。ただしArkhamでは1年以上、目立ったマイニングの流入が確認されていません。2026年10月時点で正確な保有量は独自に検証できないため、当サイトは固定の数字を示しません。
03ゲレフ・マインドフルネス・シティ(GMC)と初の取引所ライセンス
ゲレフ・マインドフルネス・シティは、ブータン南部にある独自の法制度を持つ特別行政区です。2024年12月26日に成立したGMC法第1号「法の適用に関する法律」で、アブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)のコモンロー型金融ルールを導入しました。規制当局は「2025年金融サービス法」に基づいて設けられたゲレフ金融サービス局(GFSO)で、仮想資産業務には金融サービスライセンス(FSL)が必要です。2025年1月8日には、GMCが戦略準備としてBTC、ETH、BNBを保有すると発表しました。
2026年9月29日、BTSE Bhutanが初のFSLを取得し、仮想資産の多角的取引施設とカストディを運営できるようになりました。まずBTC/USDTとETH/USDTから始め、米ドルの入出金は今後予定されていますが、ニュルタムでの入金は発表されていません。BitgetはライセンスをめざしてGMCと協力協定を結びましたが、現時点ではライセンスを持っていません。覚えておきたいのは、GMCのライセンスはGMC内の事業者とその顧客を対象とするもので、ブータン居住者が合法的に暗号資産を買えるようになったことを意味しない、という点です。
04旅行者がブータンで暗号資産を使って支払う方法
旅行者にとって、ブータンは国レベルで暗号資産決済ができる数少ない国です。2025年5月、ブータン観光局はBinance Payとデジタル銀行DK Bankと組み、観光向けの暗号資産決済を始めました。参加しているホテル、旅行会社、観光施設などで、BTC、USDC、BNBなど100種類以上の暗号資産を使って宿泊費、ツアー代、入場料、さらにはビザ代まで支払え、店舗側にはDK Bankがニュルタムで精算します。公式の説明では手数料は「ほぼゼロ」とされています。
- 出発前に自国で口座を用意する
お住まいの国で合法的に使えるプラットフォームでBinanceの口座を開き、本人確認を済ませ、Binance Payが使えることを確認します。
- 使う分のコインを用意する
支払う予定の金額を、たとえばUSDCなどのステーブルコインで残しておくと、支払い時の価格変動を避けられます。
- 対応しているか店舗に確認する
このプログラムに参加している店舗でしか支払えません。ツアーを予約する際に旅行会社に確認しましょう。
- QRコードで支払い、記録を残す
Binance Payで店舗のQRコードを読み取り、金額を確認してから支払い、画面のスクリーンショットと領収書を保存します。
ブータン旅行の準備中ですか?対応国・地域の居住者なら、出発前に自国で口座開設と本人確認を済ませておきましょう。対応国・地域の居住者向け · ブータン居住者はニュルタムで合法的に購入できません · 日本居住者は対象外
無料で口座開設「ビットコインで何が買えるか」のほかの例はビットコインで支払うガイドで、初めての購入なら暗号資産の買い方から読むのがおすすめです。日本の登録業者の比較は日本の暗号資産取引所比較にあります。
05ブータンの暗号資産の税金とリスク
ブータンには暗号資産専用の税法がありません。所得税法上、暗号資産関連の企業には22%の法人税がかかります。個人所得税は累進課税ですが、個人の暗号資産の利益をどう扱うかは明確ではありません。GMCには区内の登録事業者向けの独自の税制があります。
| 対象 | できること | 注意点 |
|---|---|---|
| 入国旅行者 | 参加店舗でBinance Payで支払う | 口座は自国で合法的に開設すること |
| ブータン居住者 | 合法的なニュルタム入金ルートなし | 銀行資金での購入はRMAのルール違反 |
| GMC登録事業者 | GFSOのライセンス取得後、マイニングや取引を運営 | ライセンスは本土の個人ユーザーを対象外 |
このほかのリスクとして、国家保有ビットコインの大量流出や、マイニングが続いているのかどうかという不透明さがあります。「ブータンがビットコインを買い集めている」という話を投資判断の根拠にしないことをおすすめするのはそのためです。口座とウォレットの安全対策は暗号資産のセキュリティ、アジアのほかの国のルールはアジア各国ガイドをご覧ください。
よくある質問
ブータンで暗号資産は合法ですか?
ブータンは暗号資産を全面的に禁止してはいません。ただしブータン王立通貨庁(RMA)が2025年4月30日に示した規制方針により、暗号資産のマイニングと取引所はゲレフ・マインドフルネス・シティ(GMC)に登録した事業者とその提携先にしか認められていません。RMAの監督下にある銀行は、一般の人がニュルタムで暗号資産を買うための入金ルートを提供できません。暗号資産は法定通貨でもありません。
旅行者はブータンで暗号資産で支払えますか?
支払えます。2025年5月から、ブータン観光局、Binance Pay、デジタル銀行のDK Bankが旅行者向けの暗号資産決済を提供しています。参加しているホテル、旅行会社、観光施設などで、BTC、USDC、BNBなど100種類以上の暗号資産をQRコードで支払え、店舗側はDK Bankを通じてニュルタムで受け取ります。これは入国旅行者向けのサービスで、居住者が暗号資産を買うためのルートではありません。
ブータン政府はビットコインをどれくらい保有していますか?
ブータンの政府系ファンドDruk Holding & Investments(DHI)は2019年ごろから水力発電でマイニングを行い、2024年10月には約13,000BTCを保有していました。Arkhamのオンチェーンデータでは、2026年5月16日時点で関連ウォレットの残高は約3,100BTC(約2.52億ドル)です。ただしDHIのCEOは最近の売却を「覚えていない」と述べており、正確な保有量には議論があります。
ブータンにライセンスを持つ暗号資産取引所はありますか?
1社ありますが、ブータン本土の金融システムの外です。2026年9月29日、BTSE Bhutanがゲレフ金融サービス局(GFSO)から初の金融サービスライセンスを取得し、BTC/USDTとETH/USDTの取引とカストディを提供しています。米ドルの入出金は今後予定されていますが、ニュルタムでの入金は発表されていません。BitgetはGMCと協力協定を結びましたが、ライセンスは取得していません。
参考資料
- Royal Monetary Authority of Bhutan — Regulatory stance on cryptocurrency(原文URL、調査時はアクセス不可) · 2025年4月30日
- CoinDesk — Bhutan has sold 70% of its bitcoin in 18 months · 2026年4月11日
- CoinDesk — Bhutan doesn’t recall selling any bitcoin · 2026年5月16日
- Gelephu Financial Services Office (GFSO) · 2026年10月確認
- Chainwire — BTSE Bhutan receives Financial Services Licence in GMC · 2026年9月29日
- Cointelegraph — Bhutan launches crypto tourism payments with Binance Pay and DK Bank · 2025年5月
ブータン旅行を計画中ですか?
対応国・地域にお住まいなら、出発前に自国で口座を開き、本人確認を済ませておきましょう。ブータン居住者はRMAのルールに従ってください。
国際ライセンス取得プラットフォーム · 2013年から運営 · 対象国の居住者向け(日本居住者は対象外)